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特別寄稿 東北関東大震災・津波後の日本における海事事情

H23.5.25 William A. Howard(翻訳:田中庸介,手塚祥平,平良夏紀)

以下は,近時,日本に起こっている出来事の結果として起こり得る様々な問題に関する,基本的なアドバイスです。このような日本の状況に対して,基本的なアドバイスを行うことは困難であることは,ご留意ください。いかなる問題も,事実,契約の条件,契約に適用される法に従って解釈されなければなりません。

非安全港

船主と傭船者の主な関心は,ある特定の港が安全であるか否かであり,この問いに対する回答は,両当事者それぞれによる傭船契約の履行内容に影響を及ぼすことになります。

安全性の判断基準

定期傭船契約においても,航海傭船契約においても,多くの場合,明示的な条項により,傭船者に対して,安全な港(もしくは停泊場所)を指定する義務が課されています。

安全性の従来の判断基準は,問題となる当該期間の間に,異常事態を生じない限り不可避な危険にさらされることなく,その特定の船舶が,港にたどり着き,港を利用し,かつ,その港から出港することができれば,その港は安全であるというものでした。常に,高い航海技術および海技(seamanship)も求められています。指定された港は,例えば自然的または物理的原因によって,船舶の入港,利用または出港に危険がある場合には,安全でないことになります。船舶自体には危険がなくとも,船員にとって危険がある場合には,その港は,未だ安全でないことになります。安全性保証の対象には,港への進入航路も含まれます。

傭船者側の保証は,事前の予測によってなされるものであり,すなわち,指定された港は,その指定されたときに,入港,利用,出港に安全でなければなりません。指定された時点で予見できなかった事情によって,指定後に港が安全でなくなったとしても,傭船者に義務違反は生じません。ただし,震災以前に,現在は安全でない日本の港に行くように指示が出されていた場合,定期傭船者には,安全な代替港を指定する(以下「再指定」といいます。)義務が生じます。

航海傭船の場合の傭船者の再指定義務に関しては不明確な点が残ります。もっとも,英国裁判所の多数の判例を分析すると,基本的には,指定から入港予定時期までの間に港が安全でなくなった場合の再指定の権利や義務はないと考えられます。

放射性物質で汚染されている可能性のある港は安全か

船員が放射線に被曝する危険があれば,港は安全ではないとされる可能性があります。放射性物質が船舶本体に影響を及ぼす危険性をもって,港が安全ではないとされるということもあり得ましょう。重要なのは,日本の港が放射性物質による汚染により安全ではないとして,船主が寄港を拒否するためには,その主張が客観的かつ合理的な判断に基づかなければならないことです。たとえば,東京の港は放射性物質による汚染の可能性があるため安全でないという理屈は,支持されないと考えられます。ただし,当然のことながら,状況は常に変化しているため,最新の情報をIAEAのウェブページhttp://www.iaea.org/などから得る必要があります。

船主と船長または船員との間で,日本の港の安全性について意見が分かれた場合,両当事者は,関係する労働契約を参照して,労働者の権利を確認する必要があります。

仮に,日本の港で船員が被曝した場合には,その責任の所在は,船主に船員との間の労働契約違反があるか否か,もしくは,傭船者に,港が安全でなかったことによる傭船契約の違反があるか否か,によります。

閉鎖された港は安全ではないのか?

現在閉鎖されている港は,安全であるかという問題もあります。

入港する前に,船舶が一定の時間待機しなければならないことをもって,港が安全でないとはいえません。もっとも,遅延が続けば,当事者はその遅延の原因を更に詳しく調査することとなるでしょう。その調査によって得られた原因によっては,港が安全でないものとされることはあり得ます。遅延が長引けば長引くほど,当事者は,その港が安全でないことの根拠をより多く取得することができることになります。

東京および東京以南の港は,通常通り運営されていると報告されていますが,八戸,仙台,石巻および小名浜の東北地方沿岸の港は甚大な影響を受けています。ロイター通信によれば,「これらの港は,震災によって激しく損傷を受けており,通常通りの運営に戻るには,数年とまではいえないとしても,数カ月はかかる」といわれています。同じ報告書によれば,鹿島港およびより小規模な港である常陸那珂港は,比較的軽度の損傷を受けるにとどまり,数週間で通常通りの運営に戻ることができるといわれています。

当然ながら,この情報は,関係当局に確認する必要があります。

本船使用指示(Employment Order)

傭船者が安全ではないと知られている港を指定した場合,船主には,当該港へ行くことを拒否する権利があり,また,傭船者に対して,他の安全な港を指示するよう要請する権利があります。

船主が傭船者の指示する港への寄港を拒否する権利を直接定める先例は存在しませんが,安全性の判断は,客観的に行われるものです。もし船主が日本の港へ入ることを拒否しようとし,被曝のリスクについての船主の懸念が正当な理由のないものであったり,客観的に誤りである場合,寄港拒否は,船主の義務違反を構成することになります。一般的なルールを設定することは難しいですが,我々の見解は,仮に仲裁裁判所(Tribunal)が判断するとすれば,合理的な船主が(もっとも,合理的な船主はそれぞれそのリスクアセスメントの方法および結果が異なるかもしれませんが),被曝のおそれがあり寄港が危険であると判断するに足りる十分な客観的証拠があるかを検討することになる可能性が高いということです。他の船舶が同じ港に同時期に寄港する準備が整っているという事実は,港の安全性の判断要素にはなりますが,決定的な要素ではありません。船主としては,必要に応じて,さらなる助言を求めるべきでしょう。

船主は,指定された港を評価する機会を与えられ,当該港が安全でないと判断した場合には,原則として、2つの選択肢を有することになります。一つは,指定された港への寄港を拒否し他の代替港を指定するよう要求することであり,二つ目は,安全でないという判断にかかわらず寄港することです。仮に,船主がリスクに対する懸念を持ちながら,それでも構わず安全でない港に船舶を寄港させた場合,当該港の指定を契約違反として拒否し,代替港の指定を要求する権利は放棄されたものとみなされます(何ら留保がない限り)。もっとも,傭船者には,安全港保証義務違反として,港が安全でなかったことにより船主が被った損害に関して損害賠償責任に問われる可能性が残ります。

日本のどこであるかに関わらず,日本のいかなる港への寄港指示も違法であり,船主が寄港を拒否できるということにはなりません。地震および津波の被害を受けた地域以外の港は,現在,開港し運営しています。船主と船長は,検討対象の港,その現況を考慮に入れ,当該時点における事実を優先して,具体的な状況を分析しなければなりません。

離路(Devivation)

被曝の危険を理由とする離路の自由が認められるか否かの問題を検討するには,関連する傭船契約または運送契約の明文規定(express term)を考慮する必要があります。もっとも,船長は,船舶,船舶上の財産または生命に対する危険(航海上の危険であっても,その他の危険であっても)を避けるために,迂回する権利があります。迂回する権利の存在が決定的に重要となるのは,生命への危険があるために離路が必要であるとする合理的理由がある場合です。航路変更の決断が正当か否かは当該具体的状況における事実関係によって定まります。

積荷が代替港に運送されなければならない状況において,航路変更が合理的で有るか否かを判断するためには,関連する船荷証券の権限条項(liberty clause)を検討する必要があります。多くの定期航路の船荷証券には広汎な権限規定(liberty provisions)が含まれています。

航海傭船中の船舶にとっては,指定された港以外で荷揚げをするためには,当事者間で新たな合意をするか,傭船契約の「最寄りの港へ寄港しうる(so near thereunto)」条項を根拠とするか,または,重大な不可能性を見出すかが必要になります。後者は,契約の終了原因(frustration)を探すことと同じことを意味します。

遅延:誰が責任を負うのか

港または水路が閉鎖されているか損傷している場合には,定期傭船契約または航海傭船契約の履行に不可避的に遅延が生じます。さらに,港が運営されていたとしても,たとえば,港の設備が損傷を受けていたり,港と行き来する交通システムに障害が生じている場合にも,遅延は生じます。

定期傭船の場合,遅延による影響を最も受けるのは傭船者です。傭船契約が終了するか,(定期傭船契約の条項に従って)本船が他の港へ行くことを指示されるまでは,傭船料も生じ続けます。傭船者がオフハイヤーを主張できるか否かは,オフハイヤー条項の内容およびそのときの状況によって定まります。オフハイヤー条項が単に「他の原因(any other cause)」という言葉を含むのであれば,港の閉鎖などの全く想定外の原因による遅延は,オフハイヤー事由には該当しないとされる可能性が高くなります。もっとも,「如何なる原因も(whatever)」という文言が付されている場合には,当該条項の解釈は広がり,考え得るあらゆる事由が船舶をオフハイヤー事由になり得ると考えられます。

航海毎の定期傭船(trip time charter)の船舶の場合,傭船者の(常に,傭船契約および船荷証券の条項上可能な揚地の選択肢に従って)船舶を代替港へ入港するよう指示できる範囲が限られます。

航海傭船契約においては,本船が港に到着した後の停泊期間の起算および滞船料の発生は,傭船契約の条項により決まります。問題となるのは,危難が去り,港は運営されているが,震災および津波の影響が遅延を生じさせ続けているため,停泊期間が中断される場合です。停泊期間(laytime)の中断について「作業をなしうる天候の日(weather working days)」という用語で規定されていることがありますが,これは,天候が直接的に積荷の積入れや荷降しに影響し,停泊期間が中断される場合を指します。悪天候のために生じた遅延を停泊期間から除外する条項は,遅延の原因が悪天候であれば,停泊期間の起算を妨げることになります。もっとも,この場合,傭船者は,単に一時的に停泊場所が安全でなくなったのではないこと,またはその他の事由が真の遅延の原因ではなく,悪天候のために荷の積入れ積降ろしが遮られたことを示さなければなりません。日本の港の場合,遅延は,地震に続く津波の影響がその直接的な要因であっても,作業の中断が真の原因で有る可能性が高いと考えられます。

さらなる疑問は,停泊場所に関する「常に利用しうること(always accessible)」または「到達しうること(reachable on arrival)」の条項違反があるか否かです。このような条項は,停泊期間の開始には影響しませんが,船主は,傭船者に対して,停泊場所が到着に際して入港可能であることの保証義務違反に基づく長期滞船損害金(damage for detention)の賠償請求をすることができます。(「reachable on arrival」条項は,船舶が港に到着したことを仮定している点に,注意が必要でしょう。)

不可抗力

契約の中には,「不可抗力」条項,すなわち,特定の場合に,一方または双方の当事者の責任を免除する条項を含んでいるものがあります。英国法には,不可抗力に関する一般的な原則がないため,契約条項の内容が全てであり,不可抗力を主張する者が,当該契約の不可抗力条項に当てはまる事実を示さなければなりません。

問題となる不可抗力条項の規定は,特徴的な出来事を含むことができる程度に広義に解釈できるものでなければなりません。さらに,不可抗力を主張する当事者は,問題となる出来事が,契約内容の履行を遮りまたは妨げ,および/または遅延を生じさせたことを証明しなければなりません。その当事者は,問題となる出来事が回避不可能なものであったこと,および,当該出来事またはその結果による影響を回避または緩和する合理的な手段がなかったことも証明しなければなりません。

当事者が,不可抗力の主張をする場合,契約内に定められた期間の制限(たとえば,他方当事者に通知を発する期間など)を厳守することが不可欠です。

現在日本で起こっているような出来事は,多くの場合,天災または当事者の回避不可能な出来事として,ほとんどの不可抗力条項の適用対象となると考えられます。もっとも,最終的に不可抗力条項が適用されるか否かは,詳細な事実関係の厳密な分析結果によります。

傭船契約の終了(Frustration)

さらに検討すべき事柄は,港の閉鎖または閉鎖による遅延により傭船契約が終了するか否かです。

閉鎖した港は,いずれ再開しますから,一時的な閉鎖が契約の終了を意味するのかという疑問が生じます。契約の履行期間中に,いずれの当事者の過失にもよらない根本的な事情変更が生じ,傭船契約内には当該事情変更に適用可能な条項がないため,新たな状況の下では双方当事者に契約の履行を求めることが公平に反する場合には,傭船契約は直ちに終了します。

遅延による傭船契約の終了について検討するに際しては,契約終了のためにどの程度の遅延の期間の長さが必要かに関して,明確な原則がないため,個別事案における状況,特に,予測される遅延期間が,傭船契約の残りの期間に対してどの程度であるかによって判断することになります。

そのため,航海毎の定期傭船契約および航海傭船契約は,定期傭船契約に比べて終了する可能性が高いことになります。傭船契約が終了するか否かの判断は,遅延が生じたときを基準に判断しなければならず,後に生じた事情は考慮してはなりません。当該事案には多数の特有な事情が存在しますが,傭船期間が20日間の船舶に関し,3日間の返船航海を108日間かけて終えた事案について,傭船契約は終了しないと判断されたものがあります。

傭船契約は,地震または津波によって本船自体が損傷を受けた場合にも終了する可能性があります。

当然,予見不可能な出来事による遅延の場合に備えた条項を傭船契約に定めることは可能ですから,そのような定めがある傭船契約の場合には,当該傭船契約の条項に基づいて判断されることになります。もっとも,当該条項が当該予見不可能な出来事をカバーし得るものであるかは慎重に判断されなければなりません。傭船契約に,予見不可能な事態に備えた条項を定めていることをもって,当該条項に当てはまらない事情が生じた場合や,傭船契約の想定を上回る遅延もしくは困難が生じた場合に契約が終了する可能性はないとはいえません。さらに,上記のとおり,遅延は,指定された港が安全ではないことを意味する可能性があり,その場合は代替港を要求する権利が生じます。

英国裁判所は,異例な場合でない限り,基本的に傭船契約を終了させる判断をすることを好みません。契約の終了は,本来的には,いずれの当事者も債務不履行に陥らずに,その契約を履行すべき状況が,履行の内容を契約の当初に定められていたものから「根本的に異なる」ものとしてしまう場合に認められるものです。このような法的効果は,大きく,個別事案の事実関係によって定まることになります。

船荷証券

船荷証券は,船舶の傭船に関する契約とは異なる,貨物の運送に関する契約を表章するものであることを忘れてはなりません。したがって,船荷証券には独自の条項が定められ,必ずしも,船荷証券に表れる契約に,傭船契約上の権利義務に関する条項が自動的に適用されることにはなりません。

関連する船荷証券が傭船契約の条項もしくは権限条項を含まない限り,または荷受人が了解しない限り,または船荷証券に表章された契約が終了しない限り,船荷証券に記載された港以外の港における貨物の荷揚げは,船主の船荷証券所持者に対する義務違反となります。

そのため,船荷証券に現れる契約の条項を,傭船契約の条項からは離れて,注意深く確認することが不可欠になります。

ヘーグ・ヴィスビー条約

当事者間の契約のいずれかがヘーグ・ヴィスビー条約を摂取している場合,船主には,多様な防衛手段があることになります。条約は,運送人も本船も,「危険,海難事故,天災,その他運送人の過失および運送人の契約先または運送人の代理人もしくは使用人の過失によらずに生じた原因」により生じた損失または損害の責任を負わないと規定しています。

英国裁判所は,基本的に免責条項の存在を良く思わないため,免責条項を厳格に解釈する傾向があることは気に留めておかなければなりません。当該条項の適用を主張する者(ここでは,船主または運送人)が,当該条項が適用されるための必要な証拠を提示しなければなりません。

日本における出来事は,天災,または,運送人の過失および運送人の契約先の過失のない原因によるものであると認定される可能性は高く,当事者が免責条項の適用を主張できるかは,個別事案の事実関係によって定まることになります。

本論文を具体例に適用することができるように,現在の日本における状態から生じる可能性のある状況を以下に仮定し,解説を加えました。

事実

船主・原傭船者の間で,本船の定期傭船契約が締結され,原傭船者・再傭船者の間で航海毎の定期傭船契約が締結されているとします。また,再傭船者は,航海傭船者との間で航海傭船契約を締結しており,船荷証券が発行されていると仮定します。

航海傭船契約は,小名浜にある二つのバースのうちの一つで荷揚げすることを定めています。荷揚げ港に関し,航海傭船契約では「指示に従い,安全に引き渡すことができ,本船が常時浮揚することができる場所で貨物を引き渡す」旨規定されています。

航海毎の定期傭船契約では「日本への一回の傭船航海は,常時浮揚することができる,常に安全な錨地,安全な港,安全なバース」と規定されています。

本船は,現在,石炭を荷揚げするために,小名浜に向かっています。通信障害により小名浜港に生じている支障の程度を確認することは不可能ですが,地震と津波によって激しく影響を受けています。また,深刻な原子力の問題が発生するリスクもあります。

航海傭船者が,再傭船者に対し,航海傭船契約において特定された港の特定のバースの安全性に関して,航海傭船契約に基づく義務を負うことがあるとすれば,その内容はどのようなものか?

航海傭船契約においては,二つのバースが一つの指定された港において指定されており,荷揚げの場所に関しては,本船は,「指示に従い,安全に引き渡すことができ,本船が常時浮揚することができる場所で貨物を引き渡す」こととされています。これらの条項は,航海傭船者が,指定されたバースおよび港が,本船が安全に貨物を引き渡すことができる場所であることを保証していることを表しています。つまり,明示的な合意により,指定されたバースおよび港が安全でないことのリスクは,航海傭船者に課せられることになることを意味します。

再傭船者が,原傭船者に対し,荷揚港の地域として規定された範囲内の個別の港の安全性に関して,航海毎の定期傭船契約に基づく義務を負うことがあるとすれば,その内容はどのようなものか?

再傭船者は,原傭船者に対して,本船に対して寄港を指示した日本の港およびバースの安全性に関して,航海毎の定期傭船契約上特別な責任を負っています。

前記事実のもとでは,航海傭船者は再傭船者に対して,バースおよび港の安全性に関して,義務違反があるか,同様に,再傭船者は原傭船者に対して明示的な義務の違反はないか?

船員に対するリスクがあれば,本船自体に損害のリスクがなかったとしても,港が安全でないという解釈が可能になります。そのため,港の原子炉が爆発して,港や近くの船舶に深刻な損害を引き起こす可能性がなかったとしても,船員に対するリスクがあれば,当該港およびバースが安全でなくなる可能性は十分に存在することになります。

港は,一定の期間,船舶が,異常事態がない限り,航海技術等では回避できない危険にさらされずにその港に到達し,港を利用し,出港できるという場合でなければ,安全とはいえません。本件の港のように,原子力の問題に直面している港の場合,船舶が,航海技術等では回避できないような危険にさらされずに,どのようにして寄港することができるのかを考えるのは困難です。その危険が一時的なものかは,状況がどのように変化するかによります。さらに,本件の問題は,歴史的規模のマグニチュードや津波の影響と,それに続くこの自然災害によって引き起こされた原子力発電所における事故という異常事態を原因として生じたといえます。バースおよび港は,当初から安全ではなかったわけではなく,指定の後に安全でなくなりました。この点に関しては,検討の対象が定期傭船契約であるか,航海傭船契約であるかによって,帰結が異なります。

定期傭船契約においては,港/バースが指定後に安全でなくなった場合,傭船者は,当初の指定を取消し,新たな安全な港またはバースを指定する義務があります(当事者が傭船契約を続けようとすることを前提に)。航海毎の定期傭船契約および航海傭船契約に類似する点があることが,再指定に関する傭船者の義務に影響を与えるとは思いません。したがって,原傭船者は,再傭船者に対して当初の指定を取り消し,日本における他の安全なバース/港への寄港を指示するよう求めることができます。本船は,その新たな指示に従うことができ,新たに指示された航海を終えるまで,オンハイヤー状態を維持することが可能になります。

航海傭船契約においては,状況が異なります。もっとも,判例上,航海傭船契約における状況がどのようなものかは必ずしも明確というわけではありません。航海傭船契約については,一般的に,予想を超える危険がある場合の再指定についての一般的な義務または権利はないと考えられています。当事者は,傭船契約を変更する方法により,代替港を合意をすることができ,その状況は,傭船契約内の戦争条項,氷結条項または「安全にたどり着ける最寄りの場所に寄港しうる」条項に該当することが多いと思われます。再指定の権利も義務もないことは,バースチャーター契約において,船主に対し,本件のように,停泊期間が開始せず滞船料も生じないという問題を生じさせる場合があります。なぜなら,本船が港から安全な距離を保って待機している場合には,本船はarrived shipになったとは認められないからです。

船荷証券のもとの状況はいかなるものか?

上記のように,船荷証券に記載された揚地以外の港で積荷を荷揚げすることは,特段の事情のない限り,船主の船荷証券所持人に対する義務違反となります。

参照

以下は,個別の港または地域の状況について事実調査を行っている可能性のあるウェブサイトのリストです。

ISS P&I Japan, 日本の港の現状をアップデートしています:
http://www.iss-shipping.com/microsites/News.aspx?msid=194&menu=News

日本政府ウェブページ:
http://www.kantei.go.jp/foreign/topics/2011/earthquake2011tohoku.html

気象庁:
http://www.jma.go.jp/en/tsunami/

原子力安全保安院:
http://www.nisa.meti.go.jp/english/index.html

WHO原子力事故に関する質問集:
http://www.who.int/hac/crises/jpn/faqs/en/index.html

IAEA:
http://www.iaea.org/

海上保安庁航海警報:
http://www1.kaiho.mlit.go.jp/TUHO/nwe.html

AWTのような組織は,継続的に状況を調査しており,放射能の排出および関連問題の処理について追跡し,今後の予測と典型的な排出についての情報を提供することができます。

結論

以上は,現在の日本における状況下において起こりうる主な問題に関する基本的な分析です。

いかなる問題の分析においても,個別の状況における事実関係に大きく依拠することになります。したがって,船主の判断が正当で合理的なものであると認められるために,船主にとっては,常に最新の状況を把握しておくことが不可欠となります。当然,日本における出来事の影響を受けた方は,できる限り最新の情報を追っていく必要があります。

この論文に関して質問があれば,遠慮なくご連絡ください。

       

ウィリアム・ハワード
2011年3月18日

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