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第86回 賃料減額請求の注意点

H24.4.4 西川 精一

長引く不況とデフレの中,景気が良かったころに借りた家や事務所,土地の賃料が高すぎるのではないか,と思うことはありませんか。そんな場合に,借地借家法は「賃料減額請求」という仕組みを設けています。

建物の場合でいえば,同法32条1項本文は「建物の借賃が,土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により,土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により,又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは,契約の条件にかかわらず,当事者は,将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。」としています。ポイントは「借賃が不相当となったとき,契約の条件にかかわらず,将来に向かって借賃の額の増減を請求することができる」です。
そして,賃料減額請求権は,裁判外でも行使できることになっています。

そうすると,好景気期に借りた建物があるとして,その賃料が,近傍同種の建物の賃料より高く,貸主との間で賃料減額の協議が整わない場合,借主は,「法32条1項に基づき賃料減額請求します」と意思表示して近傍同種の建物の賃料相当額を支払えばよいのでしょうか。
これについては同法32条3項本文が「建物の借賃の減額について当事者間に協議が調わないときは,その請求を受けた者は,減額を正当とする裁判が確定するまでは,相当と認める額の建物の借賃の支払を請求することができる。」と定めています。
そして,「相当と認める額」とは原則として従前の賃料の額とされています。
つまり,借主は,「賃料減額請求権を行使します」と意思表示すれば,その時から減額請求の効果は発生するが,協議が調わない間は,とりあえず従前の賃料を支払わなければならず,勝手に近傍同種の建物の賃料相当額だけを支払っていては,貸主から債務不履行だといわれ,契約解除を主張される恐れがあるということです。

2つめに注意すべきは,近傍賃料が約定賃料の半分だからといって,適正賃料も約定賃料の半分とされるわけではないという点です。
貸主,借主の協議が調わなければ,裁判で,差額配分法,利回り法,スライド法,賃貸事例比較法などといった手法を組み合わせて,適正賃料を定めることになります。近傍賃料は,新たに契約する際の適性賃料(新規賃料)に近似しますが,過去に契約した賃貸借契約の現在における適正賃料(継続賃料)算定にあたっては一資料にしかならず,やはり当初の約定賃料や様々な事情も勘案し,加重平均をとるなどして適正な継続賃料を定めます。

ですので,先の例の,「『法32条1項に基づき賃料減額請求します』と意思表示して近傍同種の建物の賃料相当額を支払う」というやり方は2つの意味で間違っているということになります。

賃料減額請求に関する問題としては,反対に,貸主として,思いがけない賃料減額請求を受けないようにするためには,どうすればよいのか,また,不況下で今は安く貸さざるを得ない不動産について,景気が良くなったら賃料を上げるという仕組みにするには,どのような工夫をすればよいのか,など様々な問題がございますので,ご疑問点がございましたら当事務所まで気軽にご相談いただければと思います。

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