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第71回 リゾートな時間を買う方法

H23.10.11 村尾 卓哉
  • 光陰矢のごとしとはよく言ったもので,つい先日まで暑い日が続いていましたが,秋刀魚と,きのこご飯が美味しい季節になって参りました。秋の夜長には,やっぱり夏に過ごしたリゾートに思いを馳せてしまいますよね。しまうはずです。今回は,すっかり旬を過ぎてしまった感のあるリゾートにまつわるお話です。
  • みなさんはタイムシェアという言葉を聞いたことはありますか。タイムシェアとは,リゾ−トマンション等のリゾート物件を1年のうち一定期間(通常は1週間単位),所有する権利を購入するシステムのことで,欧米においてはリゾート物件の購入方法の1つとして広く認知されています。
    これだけ聞くとリゾート会員権とどう違うのか,と思われるかもしれませんが,欧米では,タイムシェアはあくまでリゾート物件の共有持分権の取得ととらえられており,リゾート物件を特定期間利用する権利というものを登記することが出来ます。つまり,会員権と異なり,リゾート企業の倒産によって購入者の権利がなくなるというようなことがないようにしているのです。
  • さて,このタイムシェアですが,日本においても共有持分権の取得と捉えることには若干の問題点があります。
    欧米においては前記のとおり,「特定の部屋を特定の期間利用する権利」を登記することが出来ます。一方,日本ではそのような登記は認められておらず,あくまで特定の部屋に共有持分権を有していることを登記されるに過ぎません。
    そうすると,リゾート企業が倒産した場合には,特定期間利用する権利は保全されず,共有持分権だけが保全されることになります。これでは,リゾート企業の経営状態いかんによって,円滑にリゾート物件を利用することが難しくなってしまいます。
  • そこで,日本の現行法の枠組みの中で,タイムシェアの法的構成を考え直す必要性が出てくることになります。企業が施設を信託銀行などに信託し,施設の利用を内容とする受益権を販売する信託方式,賃借権ととらえて,時間単位での賃貸借契約を締結する方式など様々な構成が考えられています。しかしながら,どのような構成も一長一短があり,どのような構成が最も適当であるかは現在も議論がなされているところです。
    例えば,時間単位での賃貸借契約(毎年9月第3週を賃借するというような契約)ととらえる構成ですと,所有者はリゾート企業と言うことになりますから,物件の維持・管理義務はリゾート企業が負うことになり,タイムシェアの実際の運用に適合する解釈といえます。本来,タイムシェアは共有持分権の譲渡と捉えられていますが,実質上はある一定期間にリゾート物件を利用する権利という面が強いわけですから,賃貸借と捉えることには,合理性があると考えられます。
    一方,所有者はリゾート企業ですから,第三者に賃借権を対抗するために,賃借権の登記をする必要が出てきます。賃借権の登記が出来れば,リゾート企業の倒産時も契約解除はされず,物件を利用することが出来ますが,現在の日本の登記実務で「毎年9月第3週の賃貸借」というような賃借権の登記が出来るのかという点は大きな問題点です。
  • 以上のような議論については,国土交通省住宅局がリリースしているタイムシェア型住宅供給研究会(http://www.mlit.go.jp/report/press/house03_hh_000004.html)の報道発表資料に詳しく解説されていますので,ご参照ください。
  • いずれにしても,タイムシェアの購入を検討される際には,リゾート企業の倒産時に自己の権利がどのように保護されるのか,物件の維持・管理については誰が一次的な責任を負うのか,第三者への売却の際にどのような手続が必要であるのかなどについてきちんと説明を受けることが重要であると思います。
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