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第58回 4月15日は,「遺言の日」!

H23.4.12 上谷 佳宏

皆さん,4月15日は,「遺言の日」であることをご存知でしょうか。

日本弁護士連合会(日弁連)は,2006年から,4月15日を「遺言の日」として,全国の弁護士会において「遺言の日」記念行事を実施し,遺言や相続問題について,法律相談や記念講演会を開催してきています。そして,日弁連は,ホームページにおいて,「遺言の日」が4月15日である理由を,“「良い遺言」の語呂合わせで4月15日です”と説明しています。

しかし,沿革的には,4月15日が「遺言の日」となったのは,「良い遺言」と語呂合わせしたからではなく,単に「4(ユ)月15(イゴン)日」と語呂合わせしたからなのです。なぜ私がそう断言できるかというと,4月15日を「遺言の日」とすることを全国に提唱しようと言い出したのは,実はこの私だからです。

そこで,今回は,「遺言の日」誕生の経緯について記しておきたいと思います。

「遺言の日」は,1997年4月15日,神戸弁護士会(現兵庫県弁護士会)が主催して行った「遺言(ユイゴン)の日」事業に端を発します。私は,当時,この事業の実行委員会のメンバーとして活動したのですが,この事業の目的は,遺言制度利用の普及にあり,この事業は,市民に遺言制度の利用が定着するまでの間,毎年継続的に行い,かつ,全国的に普及させることをも視野に入れていました。

この当時,なぜ遺言制度利用を普及しようとしたのかというと,バブルにより地価が一時高騰したことから,遺産相続は資産家だけの問題ではなくなり,遺産分割協議がまとまらないケースが増加し,親族間で深刻な争いとなった案件が多数弁護士のもとに持ち込まれたという事情があります。弁護士にとって,相続争いも仕事の一つではあるのですが,その多くは,いわば愛憎と強欲が絡まりあい,理屈だけでは片付かない,できれば扱いたくないタイプの仕事でした。そして,このような紛争の多くは,適切な遺言がなされておれば,回避できるものでした。しかし,当時,弁護士が「遺言を作成しておけば,このような争いはなくなりますよ。」といくら言っても,多くの人は,「遺言なんて,縁起が悪い。」と言って作成しようとはしませんでした。

そこで,遺言を市民の間に普及させるための工夫が必要であると考え,その中で思いついたのが「遺言の日」の制定でした。毎年,この日に遺言のことを考えてもらうことにすれば,次第に遺言に対するアレルギーがなくなり,遺言を作成する人も増え,無用の紛争の発生を抑えることが期待できると考えたのでした。

次に問題となったのは,「遺言の日」を何月何日にするかでした。他に候補となったのは,「1月15日」,「11月5日」「11月15日」です。しかし,私は,「4月15日」を強く推奨しました。遺言を作成するということは,決して,残った自分の財産を相続人や第三者にどう与えるのかを考えることだけではありません。その前提として,自分の財産を生前にどれだけ使えるか,あるいは,どれだけ何に使おうかを考えることになります。また,誰にどれだけを与えるかを考えることは,自分自身と相続人らとの人間関係を改めて考えるきっかけにもなります。すなわち,遺言を作成することは,自分のこれからの人生の過ごし方や人間関係のあり方を考え直すきっかけにもなるのです。遺言の作成は,いわばその後の人生設計ともいえるのです。このようなことをするには,他の候補日よりは,春の明るい日ざしに包まれた「4月15日」が最も相応しいと思いました。なによりも,桜の花が咲き誇る「4月15日」は,遺言に対する暗いイメージを明るいイメージに変換するのに最適の日です。しかも,多くの人は,確定申告を3月15日までに終え,自己の財産の概要も知った直後です。

このようにして,「遺言の日」は,誕生し,神戸新聞の1997年4月15日朝刊には,「遺言を人生見直すきっかけに」「神戸弁護士会が音頭 全国に提唱へ」との見出しのもとに,神戸弁護士会による第1回の「遺言の日」事業の紹介記事が掲載されました。そして,神戸弁護士会で始まった「遺言の日」事業は,関係者の皆様の地道な努力で毎年継続され,1998年には,近畿弁護士会連合会の各単位弁護士会においても開催され,2006年には,遂に当初の念願がかなって,日弁連の事業となり,全国各地の弁護士会で開催されるようになりました。弁護士会にとって,委員会構成が変わる年度替わり直後の4月15日に事業を行うことは,実に大変なことなのですが,この困難を乗り越えて事業を継続してこられた関係者の皆様には,敬意を表したいと思います。

ところで,先に書いたように,「遺言の日」事業の目的は,遺言制度利用の普及にあり,この事業は,市民に遺言制度の利用が定着するまでの間,毎年継続的に行い,かつ,全国的に普及させることをも視野に入れていました。このうち,「遺言の日」事業を全国的に普及させることは達成できたのですが,遺言制度利用の普及の方は,どうでしょうか。私は,「遺言の日」を提唱した頃に比べると,遺言は市民の皆様に随分身近なものとなったとは思いますが,まだまだ市民に遺言制度の利用が定着したとまでは評価できないと思います。したがって,これからも,市民に遺言制度の利用が定着するまでは,毎年4月15日の前後に,全国各地の弁護士会において,「遺言の日」事業が行われることを祈念します。

最後に,イメージが悪いので前半部分がカットされてしまいましたが,私が当時考えていた語呂合わせの全容を紹介して,このコラムを終えることにいたします。

「死(4)以後(15)のことを考えるよい(41)子(5)は,遺(41)言(5)の日」

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