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第57回 個人が破産しても400万円が残せる―東日本大震災の特例?

H23.4.11 幸寺 覚

東日本大震災で犠牲になられた方には,心より哀悼の意を表するとともに,被災された方には,心からお見舞い申し上げます。今後,震災に遭われた方には,各種の救済制度が適用されるよう方策が講じられます。ただ,最終的に所謂借金である債務を負担されている方は,債権者が債務を免除してくれたり,特別な免除規定がない限り,返済の猶予などがあったとしても,最終的に債務がなくならないのが原則であるという厳しい現実があります。事実上,返済なんかとんでもない,破産手続きなどをする費用も余裕もないとすれば,後は債権者がどのように対処してくるか,訴訟をしてくるかなどを待って対処するしかありません。

一般的には,個人の方が,破産という法的手続きをして,免責(借金がゼロになる)という決定を得なければ,消滅時効の期間が経過しない限り(時効の援用は必要),ずっと債務が残ったままになります。債務が残ったままになると,これから,何年か先に生活が立ち直り,ようやく少し余裕のお金ができたとしても,すべて借金の返済に充てなければなりません。そう意味でも,破産手続きをして免責決定を得られるのであれば,そのような手続きを取って,リセットしておく方がいいのです。

でも,仮に今400万円ほどの現金等の財産があっても,破産してしまえば,すべてお金を吐きだすことになり,お金が一円も手元に残らないとお考えではありませんか。通常の破産手続きでも,破産者は,無一文になるわけではなく,99万円を限度に財産を残せることが一般的なのです(自由財産又は自由財産の拡張)。逆に,破産しても99万円も手元に残せるのは,破産者に甘いなあと思うかもしれませんが,破産者も破産した後は経済的再生をしなければならないのですから,その辺りを考えて,99万円まで残せるようにしているのです。

今回,まだ確定ではありませんが,東日本大震災に関連する特別立法により,この99万円の基準が400万円に増額することを検討しているようです。これは,通常破産者は,現実の生活で使用している寝具,服,家電製品(中古の価値の無いもの)等は,99万円とは別に財産として残せるのです。しかし,被災者の方は,それら生活必需品も全て無くしておられる方が,多いですから,仮にお金を400万円持っていても,それら生活必需品を一から揃えるとなると,それ相当のお金が必要と考えられますので,その手元に残せるお金として400万円を上限とし,さらに自動車,電話,ストーブなども差押えされないようにしようと言うものであり,被災者支援の立法ということになります。

それなら,いっそ被災者の借金は特別立法で棒引きにすべきではという議論があるかもしれませんが,それでは今度は逆に債権者が債権回収できず,債権者に酷な結果になってしまいますので,そのようなことは困難であり(一部借金棒引き案もありますが),せいぜい被災者向け債権を免除した債権者に税務上優遇することにより,債権者が免除し易いようにするのが現実的な話ということでしょう。ただ,その債権が各種租税公課である場合は,減免や免除の方法で債権をなくすことは可能であり,実際そのような方法は考えられています。

いずれにしろ,過酷な環境に置かれておられる被災者の皆さんを救済する必要が大きいのは言うまでもありませんから,思い切った特別立法を期待したいです。

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