ホーム > コラム > 企業法 > 知的財産法 > 第44回 着メロから着うたへ,そして最高裁に

コラム

コラム

第44回 着メロから着うたへ,そして最高裁に

H22.11.22 山下 和哉

いまや,ケータイは,誰しもが持っており,現代人になくてはならないツールの1つであろうと思います。今回は,そんなケータイの着信音にまつわる法律のお話をさせていただこうと思います。

初めに,「着メロ」と「着うた」の違いをご説明します。両者はともに,ケータイに配信される音楽データであり,ケータイの着信音やアラーム等に使用されるものです。しかし,「着メロ」は,歌声が入っていない音源データだけのものであり,基本的にカラオケと同じ内容のものをいいますので,配信業者自らが着メロの音源データを作成することが可能となります。一方,「着うた」は,アーティスト本人の歌声の入った音楽データであり,基本的にCDと同じ内容のものをいいますので,レコード会社などが作成したCDの音源(これを「原盤」といいます。)を元に作られます。この違いから,音楽業者が「着メロ」を配信する場合には,着メロの元となる音楽の著作権を管理しているJASRACなどの著作権管理団体等に使用許諾をもらえば足りることになりますが,「着うた」を配信する場合には,レコード会社などの原盤を使用することから,上記著作権の使用許諾に加えて,レコード会社などの原盤権者による使用許諾をも得なければなりません。なお,この原盤権は,CDを複製したり,ネット上で配信したりする権利であり,「レコード製作者の権利」として著作権法96条ないし97条の3に規定されています。

このように,着メロは,権利関係の処理が比較的簡単であったことから,多くの音楽配信事業者が着メロビジネスに参入して,着メロ時代が到来しました。しかし,この事態をよく思わなかったのが,レコード会社です。なぜなら,先にも述べましたように,着メロがいくら売れてもレコード会社の利益にはならないからです。

しかし,ケータイの進化に伴って,着うたが登場し,その勢力を拡大していきました。ここで,大手レコード会社が共同出資して,着うた配信を事業とする会社(現在の(株)レコチョク)を立ち上げて,形勢を一気に逆転させました。先に述べましたとおり,この着うたを配信するには,レコード会社などの原盤権者の使用許諾が必要となりますが,各レコード会社は,着メロ配信事業者からの原盤の使用許諾の求めに対して,拒否することがほとんどでした。レコード会社は,着うたでの利益を憎き着メロ配信業者に取られまいと考えたわけです。こうして,着うた業界はレコード会社の独り勝ちという状況になりました。

しかし,レコード会社の独り勝ちの状況も長くは続きませんでした。公正取引委員会は,平成20年7月24日,大手レコード会社4社に対し,この拒否が続いている状態につき,公正な競争を阻害するおそれがあるので,独占禁止法上禁止される「共同の取引拒絶」に当たるとする審決を下しました。大手レコード会社4社は,東京高裁に対し,この審決の取り消しを求めましたが,東京高裁は,平成22年1月29日,この請求を棄却しました。そして,このうちの3社が上告及び上告受理申立てをしたことにより,現在,この事件は,最高裁に係属中であります。

一見同じように思える「着メロ」と「着うた」の間には,実はこれほどまでに深い因縁が潜んでおり,その根本には,著作権法の権利関係が影響していたのです。

ただ,この事件の最高裁判決と今後の着うた業界の行方は気になるところですが,国内の音楽事業者同士が争っている間に,加速度的に勢いを増してきているネット上での音楽配信事業者や美男・美女グループを矢継ぎ早に日本に送り込んでくるレコード会社など海外からの刺客に国内の音楽業界の利益を根こそぎ吸い上げられるという事態は避けたいものです。

このページの先頭へ