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第42回 メール誤送信と免責文言

H22.11.2 西川 精一

メールによる情報漏洩といえば,その最大の原因は「誤送信」と言われていますが,皆様はどのような対策をしておられますか。私は,メール本文が数行なのに,その後の署名に続き,さらに10行程度の免責文言がずらずらと並ぶメールをいただくことがあります。

免責文言は,「本メールは,法律上保護される秘密を含む場合があり,宛先に記載された受取人のみによる使用を意図しています。万一このメールが誤って着信したものである場合は,全てのデータを削除・破棄したうえで,誤って着信した旨を連絡してください。誤って着信したメールを閲覧したり,自己のために利用したり,第三者に開示することを固く禁止します。」といった内容のものが多く,直接的に送信者の免責を定めるというより,受信者に以上のような義務を課することによって,間接的に送信者が誤送信による秘密漏洩の責任を免れようという狙いのように読めます。

さて,このような免責文言,時にはやや高圧的な表現で記載されていることもありますが,誤送信による秘密漏洩リスクを低減する効果はあるのでしょうか。

契約は,原則として当事者間の意思の合致によって成立します。しかし,上記のような免責文言は,送信者が一方的に宣言しているだけで,受信者がこれを承諾しているわけではありません。メール受信をもって承諾とみなす,などという解釈も不可能です。したがって,このような免責文言を付けたからといって,送信者・受信者との間では,何の契約関係も成立しておらず,送信者は,誤って着信した受信者に対し,自らへの連絡義務を課することはできませんし,当該受信者がメールの内容を見たからといって損害賠償を請求することもできません。

よって,免責文言に,誤送信による秘密漏洩リスクを低減する効果は無いと言ってよいでしょう。ただし,悪意のない受信者に対する事実上の協力を要請するという意味で免責文言を付しておくという考え方はあり得ますが,それなら,(見栄えの悪さは我慢して)本文冒頭に免責文言を入れなければあまり意味がないように思います。

ちなみに,免責文言の中には「本メールにウィルスが含まれていても,当社は一切の責任を負いません」といった内容を含む場合もあり,これは前の例と異なり,直接的に送信者の免責を定めたものですが,前の例と同様に何の法的効果も無いばかりか,運転ミスをして車を他人の家に突っ込ませておきながら「責任を負いません」と一方的に宣言するようなもので,流石に身勝手すぎるように思います。

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