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第207回 株主総会チェックポイント

H29.7.20 林 智子

今年も株主総会シーズンが終わりました。各社総務担当の皆様方、本当にお疲れさまでした。当事務所でも、例年、総会指導の業務を担当させていただき、翌年以降の株主総会のスムーズな運用を目指し、少しでも参考になればということで、実際の総会の場で感じた問題点や改善点について、お伝えしているところです。

各社とも、開会宣言から閉会宣言までの「進行マニュアル」をご準備されていて、私どもも、会社ごとの工夫を拝見して、勉強になることが多いのですが、講評をする側としても、種々のチェック項目に基づいて、できるだけ評価が客観的で可視的なものになるよう努力していますので、今回はその概略についてご紹介いたします。

もとより、各社ごとに議事運営の方法は異なりますし、すべての会社に通用するような汎用的な基準というものはないのですが、例えば、当事務所で例年使用している、出席株主おおよそ300〜500名程度・質問者10名程度・目標所要時間1〜2時間を想定した総会でのチェックポイントは、次のようなものです。

★受付事務

  • 懇切丁寧な受付対応ができていたか
  • 出席株主の本人確認に問題はなかったか
  • 非株主の入場を認めてしまったことはなかったか(例:親族の代理として出席)
  • 付き添い・通訳等の入場に問題はなかったか
  • 受付・入場時のトラブルに適切に対応できていたか

★議事運営の基本的事項

  • 議長選任の説明
  • 開会宣言・閉会宣言
  • 定足数・議決権数の確認
  • マイクその他音響機器の不具合等はなかったか
  • 携帯電話オフのアナウンスはきちんとなされていたか
  • 役員の入場時・着席時・退場時の一礼はきちんとなされていたか
  • 入場者・中途退場者に対する案内誘導に問題はなかったか
  • 立ち見の株主はいなかったか(着席していただくよう案内誘導したか)

★議長の発言・回答

  • スピード(早口になっていなかったか)
  • 声量・明瞭さ(聞き取り易さ)・メリハリ・単語の区切り方
  • 発言全体の印象(落ち着き・安心感)

★担当取締役・監査役の発言

  • スピード(早口になっていなかったか)
  • 声量・明瞭さ(聞き取り易さ)・メリハリ・単語の区切り方
  • 発言全体の印象(落ち着き・安心感)
  • 目線は前(質問者の方向)を向いていたか

★議長の質問受付

  • 事前ルール設定の有無(エリアの区切り、一人〇問など)
  • 質問株主の指名が会場前方に偏っていなかったか
  • 声の大きいorジェスチャーの大きい発言者を優先していなかったか
  • 質問者の指名方法(例:前列の男性の方、向かって右列5列目の方)に取り違え等はなかったか
  • 第2会場対策(第2会場の質問希望者に適切に対応できていたか)
  • マイク手渡しのタイミング(遅くなかったか)
  • 質問者には起立を求める(原則)等の対応ができていたか
  • 質問者氏名・受付番号の確認(復唱)はできていたか
  • 質問と意見表明・要望との仕分けはできていたか
  • 無理矢理、意見表明として仕分けしたような印象を与えなかったか
  • 「貴重なご意見ありがとうございました」等の発言が株主に違和感を与えなかったか
  • 趣旨が分かりにくい質問に対し、質問を要約するなどの工夫はできていたか
  • 回答拒絶義務のある質問を受け付けていなかったか(インサイダー情報など)
  • 回答が拒絶できる質問を受け付けていなかったか(次期の配当予想など)
  • 回答を拒絶した場合に拒絶理由をきちんと説明したか
  • (個別上呈方式の場合)決議事項(報告事項)に関する質問を報告事項(決議事項)に関する質問時に受け付けてしまっていなかったか
  • 仮定の質問を安易に受け付けてしまうようなことはなかったか
  • 事前のルール設定に従っていたか(例:一人2問まで、質問1分程度)
  • 事前のルールを無視した株主(例:長時間質問)にきちんと対応できていたか
  • ヤジ・不規則発言等に対してきちんと対応できていたか(発言禁止・退場命令等)

★質問に対する回答の方法

  • 回答者(議長自身or担当取締役)の指名は明確・的確だったか
  • 回答者を指定せずにいきなり議長が回答を始めるようなことはなかったか
  • 議長回答と担当取締役回答とのバランス(前者が多すぎることはなかったか)
  • 複数の質問があった場合に回答漏れはなかったか
  • 回答が自己完結していたか(途中で終わってしまっていなかったか)
  • 「以上回答申し上げました」との締めの言葉は徹底されていたか
  • 回答者の緊張や焦りの印象を与えるような態度はなかったか

★質問に対する回答の内容

  • 質問と回答内容とが食い違っていなかったか(整合性)
  • 真正面からの回答を避けるような(論点をずらした)印象を与えていなかったか
  • 想定問答集で準備した回答の棒読みになっていなかったか
  • 回答が不愛想な(ぶっきらぼうな)印象を与えていなかったか
  • 担当取締役の回答(例:説明不足)に対する議長によるフォローはあったか
  • 説明義務違反と疑われるような回答はなかったか
  • 回答後、質問者における納得の有無について確認ができていたか(例:「以上の回答でよろしいでしょうか」等)

★事務局との連携

  • 事務局から議長等に対して議事進行についての連絡は的確になされていたか
  • 議長・担当取締役から事務局に対する手持ち資料の確認等に問題はなかったか
  • 事務局において資料調査に手間取るなどの問題はなかったか
  • 議長として判断に迷う場面で事務局と協議する等の対応はできていたか
  • 議長・回答担当者に対する連絡・資料の受渡等はスムーズに行われていたか
  • 議長・回答担当者の言い間違い等に対し事務局側で的確に訂正がなされていたか
  • 事務局内部での役割分担(発言確認・進行確認・回答内容確認・時間管理等)

★回答者以外の取締役・監査役の姿勢・態度

  • 事業報告時の姿勢・態度に問題(例:目を閉じる)はなかったか
  • 質問・回答時の姿勢・態度に問題(例:資料を急いでめくる)はなかったか

★質問打ち切りのタイミング

  • 打切りの事前予告の有無(例:あと〇名、あと○問)
  • 議場の雰囲気、経過時間等からして、打ち切りのタイミングは妥当だったか
  • 質問打ち切りにあたり、議場で挙手している株主を見逃すようなことはなかったか
  • 打ち切り後に質問を受け付けてしまうようなことはなかったか

★決議方法

  • 動議と意見表明との仕分けはきちんとなされていたか
  • 動議に対する対応は的確だったか(会社提案先議等)
  • 会社提案に対する賛否確認方法は的確だったか(起立・拍手など)
  • 提案後、ひと呼吸置いてから賛否確認ができていたか
  • 「原案通り可決されました」等、決議が成立したことの確認が適切になされていたか
  • 新任(再任)取締役・監査役の紹介の時期・方法に問題はなかったか

★社員株主・協力株主の態度

  • 「了解」「異議なし」「議事進行」等の発言が他の株主に違和感を与えていなかったか

★事前質問状の取扱い

  • 事前質問状を提出した株主の出席確認はできていたか
  • 事前質問状を提出した株主の質問に対する回答に問題はなかったか

★その他

  • 全体の所要時間は、例年or他社に比べて適当だったか

これらの項目ごとに「問題なし(OK)」、「問題あり(NG)」、「一部問題あり(一部NG)」を評価し、さらに「問題あり」と「一部問題あり」について、具体的な問題点の指摘、改善点の提示などを行っています。

株主総会は、会社役員と株主とが年1回、顔を合わせ、相互の意見等をやりとりする重要な機会であり、議事等のマニュアル化が行き過ぎると、手続だけが独り歩きする危険もありますので、以上のようなチェック項目についても、毎年内容を見直して、株主からの質問や意見をくみ上げるために最善の体制となっているのか、絶えず反省していく姿勢が求められるところです。

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