ホーム > コラム > 一般民事 > その他一般民事 > 第205回 新民法の重要改正ポイントTop10 〜運送(陸上・海運・空運)・造船業界の視点から

コラム

コラム

第205回 新民法の重要改正ポイントTop10
〜運送(陸上・海運・空運)・造船業界の視点から

H29.5.26 吉田 伸哉

本日、約120年ぶりとなる民法の債権法に関する改正法案(新民法)が、参議院で可決され成立しました。新民法の施行は2019年秋から2020年春頃と言われております。今回の民法の改正は200以上ともいわれ多岐にわたりますが、これまでの判例や学説の方向性を確認したものも多く含まれています。

運送(特に海運)・造船業界では、未だ国会提出中の商法改正法案に関心があるところですが、実は、今回の民法改正も今後の実務に様々な点で重要な影響を及ぼす点には十分留意が必要です。例えば、運送会社が日本の企業の場合、B/Lの裏面約款1つとっても、準拠法が日本法とされていますので、内航だけでなく外航においても民法改正により受ける影響は大きいといえます。造船契約や船舶管理契約についても同様のことがいえるでしょう。

にもかかわらず、海運・造船・運送業界に携わる方々への新民法の解説はまだなされていないようですので、これを機に特に重要と思われる10つの改正点について順に紹介させていただきます。

勿論、業界が異なる皆様にも是非押さえておきたい部分でもありますので、十分参考になると思われます。

I. 押さえておくべき重要改正ポイントTop10

新民法で押さえておくべき10の重要改正点として、[1]約款、[2]消滅時効、[3]法定利率・遅延損害金の金利、[4]契約の解除、[5]物損の相殺、[6]保証、[7]売買契約、[8]請負契約、[9]錯誤、[10]賃貸借を挙げることができます。

II. 個別解説
  • 定型約款(新設)

    (1)  現行の民法には定型約款の規定がありませんが、多くの業界で今や約款は契約内容を規定するものとして重要となっています。今回の新民法では、この約款に関する規定が新設されました。 約款については、新民法の施行を待たずに各社において導入・見直しを検討すべき重要事項です。

    (2)  定型取引のみなし合意規定
    定型取引を行う合意をした場合、約款の個別条項についても同意したとみなす規定が新設されました。
    具体的には、[1]定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたとき、または、[2]定型約款を準備した者(「定型約款準備者」)が予めその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたときです。

    (3)  みなし合意規定が適用されない場合(例外)
    しかし、このみなし合意規定が適用されない場合があります。
    1つ目は、「権利を制限」するか、「相手方の義務を加重する」条項で、かつ、信義則に反する場合です。2つ目は、既に相手方に約款を交付していない場合、定型取引前に相手方から請求があったにもかかわらず、その請求を拒んだときです。

    (4)  約款の変更
    新民法では、相手方に不利な場合でも、約款にその変更をすることがある旨の定めがあり、変更の内容等が合理的なものであるときは変更が許されることとされました。この約款の変更をするときは、その効力発生時期を定め、かつ、定型約款を変更する旨及び変更後の定型約款の内容並びにその効力発生時期をインターネットの利用その他の適切な方法により周知しなければなりません。

  • 消滅時効

    (1)  現行の民法では、原則10年の消滅時効としつつも、旅館・飲食店・医師・弁護士などの債権については1〜3年の短期消滅時効とされ、また、企業間の商取引には商法による5年の消滅時効が定められています。新民法では、時効制度とは次の2つに整理されると共に、短期消滅時効の制度は削除されました。

    (2)  新民法での消滅時効期間は主に次のように変更されました。

    [1]  債権の消滅時効(新166)は次のi、iiのどちらかが経過すると時効になります。

    i   主観的起算点:債権者が権利を行使することができることを知った時から5年

    ii  客観的起算点:権利を行使することができる時から10年
    但し、人の生命・身体の侵害による損害賠償請求権は20年

    [2]  債権又は所有権以外の財産権の消滅時効は、権利を行使することができる時から20年間です。

    (3)  上記[1][2]は、除斥期間ではなく時効ですので、客観的起算点から時効期間内に、時効の完成猶予によって後述する一時停止措置を講じることで、時効期間経過による権利の消滅を防ぐことが可能です。

    (4)  商法の消滅時効の規定の削除と注意点

    [1]  この改正に伴い、企業間など通常の商取引に適用されている5年の消滅時効(現商法522)も削除され、今後は新民法によって規律されることになります。

    [2]  しかし、商法で特別に規定されている消滅時効は依然有効であることに注意は必要です、例えば、運送取扱人・運送人の委託者・荷受人に対する債権は1年(現商法567、589・567)、運送品(陸上・国内海上運送)の滅失等についての運送人の損害賠償責任については運送品の引渡日(運送品の全部滅失の場合は,その引渡しがされるべき日)から1年の消滅時効(現商法589・566、766・566)と規定されています。倉庫業者の滅失・毀損の責任も原則として出庫日から1年(現商法626)などです。

    [3]  なお、現在、国会にて審理中の新商法(案)では、国内の陸上・海上・航空運送の損害賠償請求については、一律、現在の国際海上運送と同様の1年の除斥期間に改められる予定です。

    (5)  不法行為による損害賠償請求権の消滅時効(新724)

    事故や海難などによる不法行為による損害賠償請求権の消滅時効も、人身の場合の期間と20年の法的性質について改正されました。

    [1]  損害及び加害者を知った時から3年
    但し、人の生命・身体を害する不法行為による損害賠償請求権は5年となりました(新724の2)。

    [2]  不法行為の時から20年間(新724[2])
    これまで20年は、援用が不要で、また、催告などで中断(新民法では完成猶予といいます)ができない「除斥期間」とされていましたが、援用が必要で、また、中断が可能な「時効」であるとされました。

    (6)  協議による時効の完成猶予

    [1]  現在の民法は、時効期間が0から再スターする時効の「中断」制度、時効の進行が一定期間停止する時効の「停止」制度(現158~161)があります。新民法では、「中断」は「更新」に、「停止」は「完成猶予」と用語が変更されました。

    [2]  内容面の変更では、まず、「仮差押・仮処分」は、現民法では中断事由とされていますが(現147[2])、新民法では、一時的に停止する完成猶予事由になりました(新149)。また現行法では、当事者間で権利に関する協議の合意がされた場合に時効の完成を阻止する方法は特に規定されていませんが、新民法では次の[3]のように合意により時効の進行が停止できるようになった点は大きな特徴です。
    なお、現在の国際海上物品運送法では、1年の除斥期間とされており、国際海上運送については合意による延長ができます。新民法では、時効について似たような制度が新設されたということになります。

    [3]  権利についての協議を行う旨の合意が書面でされたときは、次に掲げる時のいずれか早い時までの間は、時効は、完成しないという規定が新設されました。

    i   1年未満の協議期間の合意

    ii  合意時から1年

    iii 当事者の一方から他方に対する協議の続行を拒絶する旨の書面による通知の時から6箇月

  • 法定利率・遅延損害金の金利

    (1)  5%から3%(以後変動制)への改正
    現在の民法では、法定利息は5%、商法では6%(商事法定利息)です。新民法では、法定利息は、3%に引き下げられます。その後は、市場金利の変動等を踏まえ3年ごとに定期的に見直す変動制が採用されます。他方で、企業間の商取引に適用されている商法の商事法定利息6%(現商法514)は今回の新民法の改正と共に削除されました。

    (2)  遅延損害金の減額、逸失利益の請求額の増額
    この法定利息の変更は、例えば、人身事故(交通事故・労災事故など)における被害者からの損害賠償額に大きく影響してきます。交通事故や労災事故などにおいては、事故日から(遅延)損害金を請求できますが、これが現行の5%からまず3%に変更されます(その後は定期的に変動)。これだけを見ると請求額が低くなるように思えます。しかし、事故において後遺症や死亡の場合に得られることのできなくなった将来の収入分(逸失利益)の金額は、増加することになります。

    (3)  企業の逸失利益において法定利息控除がなされる可能性
    この点で注意しておきたいのが、企業が逸失利益を損害賠償として請求する場合です。例えば、傭船契約が傭船者の帰責性によって途中で終了したため将来の逸失利益を請求する場合などは、契約に定めがない場合には、将来利息の控除として上記法定利息による分が控除される可能性があります。

  • 契約の解除

    (1)  概要
    契約の解除については、催告解除を原則について変更がなされ、また、無催告解除の場合についても大きく改正されました。無催告解除ができる場合が追加され整備されたほか、契約の一部の無催告解除についても規定が新設されました。契約解除は、あらゆる契約の解消及び損害賠償請求に影響を及ぼしますので、非常に重要な部分と言えます。

    (2)  債務者の帰責性
    現民法とは異なり、新民法では、債務者の帰責事由を解除の要件としていません。したがって、天災等により目的物の引渡が期限までになされない場合でも解除ができるようになりました。また、債権者に帰責事由がある場合、解除ができない旨が明記されました。

    (3)  軽微な違反と解除
    現民法では明記されていないものの、判例上、軽微な違反では解除できないとされています。今回の新民法では、債務不履行の程度がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは解除できないことが明記されました。実務上は、軽微かどうかが問題になることはあまり多くないのが実情ですが、今回明記されたことで、今後、解除ができる程度の違反かどうかが争われるケースが増えると思われます。

    (4)  原則:催告解除(新541)
    相手方が契約上の債務を履行しない場合、相当の期間を定めて催告をした上で解除をするのが原則です。

    (5)  例外1:無催告解除(新542・543)
    但し、次の場合には、催告なくして、契約の全部を解除ができることが明文化されました。

    [1]  債務の全部の履行が不能なとき

    [2]  債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき

    [3]  債務の一部の履行が不能である場合又は債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき

    [4]  契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、債務者が履行をしないでその時期を経過したとき

    [5]  上記のほか、債務者がその債務の履行をせず、債権者が催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき

    (6)  例外2:一部の無催告解除
    また、次の場合には、催告なくして、契約の一部を解除ができることが明文化されました。

    [1]  債務の一部の履行が不能であるとき

    [2]  債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき

  • 物損の相殺

    (1)  現民法での物損事故の相殺禁止
    現民法では、物損事故の場合、双方の同意がある場合を除いては、お互いの損害を差し引き計算して(相殺)差額を請求することは認められていません。
    このため、双方が物損の場合、一方が訴訟をしても、他方も自己の物損分を請求するために反訴(同じ裁判手続きで、別の訴訟を提起すること)をしないといけないということがよくありました。また、双方にそれぞれ支払いが命じられても、他方が、履行せず、あるいは履行前に倒産した場合には、不公平な結果を招くことが指摘されていました。

    (2)  新民法では物損同士の相殺可能

    [1]  今回の新民法では、双方の合意がある場合には勿論、合意がない場合でも、物損事故の場合には、相殺の上、差額を請求することが認められました。この点は、従来の裁判例とも異なる改正点です。

    [2]  例外(相殺禁止)
    新民法の下でも悪意の場合には相殺は認められません。

    (3)  参考(人身損害の場合)
    人身事故などの人身損害の場合には、従来と同様、双方の同意がある場合はともかく、加害者側からの上記のような相殺は認められていません。

  • 保証

    (1)  個人根保証契約の限度額の定め
    保証に関する改正の最大のポイントは、一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(「根保証契約」)について、保証人が法人でないもの(以下「個人根保証契約」の保証人の責任は、主たる債務の元本・利息・違約金、損害賠償その他の全部に係る極度額を限度とされた点です。つまり、個人根保証契約は、極度額を定めなければ、その効力が生じないとされました(新465の2)。
    現民法では、「貸金等根保証契約」(主債務に貸金等債務が含まれる根保証契約)について、極度額を定めなければ無効であると規定しています(現465の2)。新民法では、貸金等根保証契約に限定せず、個人の根保証(例えば、企業間の取引契約の根保証や建物賃借人の債務の根保証)契約にも拡大した点が大きな特徴です。

    (2)  個人保証の制限と公正証書の作成
    保証に関する2つめの大きな改正点は、保証人が法人である場合を除いて、[1]事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約、または、[2]主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約について、その「契約締結前1ヶ月以内に作成された公正証書」で保証人になろうとする者が保証債務を履行する意思を表示していなければならないとされ、これを欠く保証契約や無効とされた点です(新465の6I)。
    そして、この公正証書の作成についても次のような要式が要求されることになりました(新465の6II)。ただし、主債務者の事業に実質的に関与している者の個人保証については、上記の方式要件は適用除外とされています(新456の9)。

    [1]  連帯保証人になろうとする者が、当事者や主債務の内容及び全額について履行する意思などを公証人に口授する

    [2]  上記保証人の口述を、公証人が筆記し、保証人になろうとする者に読み聞かせ、又は、閲覧させる

    [3]  保証人になろうとする者が、筆記の正確なことを承認した後、署名・押印する

    [4]  公証人が、その証書は[1]〜[3]の方式に従って作ったものである旨を付記して、署名・押印する

    (3)  契約締結時の情報提供義務
    事業のために負担する債務について保証を求められた個人が、自ら保証債務を履行しなければならない可能性を判断できるよう、主債務者に対し、委託を受ける個人(法人を除きます)に主債務者の信用に関する一定の情報を提供する義務を課し、その義務違反は保証契約の取消事由となりました。具体的には、主たる債務者は、次の情報を提供しなければいけません。

    [1]  財産・収支の状況

    [2]  主債務以外の債務の有無、その額・履行状況

    [3]  主債務の担保として提供し、又は提供しようとするものがあるときは、その旨及びその内容

    (4)  保証人の請求による主たる債務の履行状況に関する情報提供義務(新458の2)
    債権者は、委託を受けた保証人から請求があったときは、遅滞なく、主債務の元本・利息・違約金・損害賠償など付随する従たる全てのものについての不履行の有無・残額・そのうち履行期限が到来しているものの額の情報を提供しなければいけません。

    (5)  主債務者が期限の利益を喪失した場合の情報提供義務(新458の3)
    保証人が知らないうちに主債務者が債務不履行に陥り、遅延損害金が増大した後になって保証債務の履行請求を受けると保証人に酷な結果となります。このため、保証人が個人である場合(法人には適用されません)、主債務者が期限の利益を喪失したときは、債権者は、保証人に対し、その利益の喪失を知った時から2箇月以内に、その旨を通知しなければならないこととされました。

  • 売買契約

    (1)  概要
    売買契約については、新民法では、売買契約において大きな理解の変化と法改正がなされました。いくつかの大きな改正がなされました。最大の特徴は、新民法では、特定物・不特定物問わず、目的物の種類・品質・数量に不具合があった場合(瑕疵という用語は変更されました)、損害賠償と解除だけでなく、代金減額請求、追完請求(修理、代替物の引渡し)が認められるようになったことです。

    (2)  現民法
    売買契約の対象は、その物の個性に着目した「特定物」(不動産、中古品など)と代替のきく「不特定物」に分類され、「特定物」に「隠れた瑕疵」がある場合に民法の瑕疵担保責任が認められ、不特定物は例外的な場合にのみ認められています。また、この場合に取り得る手段としては、損害賠償と解除だけで、損害賠償の範囲も、一般の損害賠償と異なり、信頼利益(大雑把に言えば代金減額に相当する程度の損害賠償)とされていました。
    また、特定物は代替がきかないという大前提で、代替物を引渡すよう請求ができないとされ、売買契約は請負と異なるので修補請求もできないとされていました。更には、代金減額請求は数量不足の場合しか認められていませんでした。

    (3)  新民法の改正点
    新民法では、特定物・不特定物問わず、目的物の種類・品質・数量に不具合があった場合、次の4つが認められます。

    [1]  追完請求(新562)
    追完請求というのは、目的物の修補請求、代替物の引渡請求、数量不足の場合には不足分の引渡請求をいいます。不適合が買主の帰責性による場合、買主は、これらの追完請求をすることができません。
    ただし、売主は、買主に不相当な負担とならないときは、買主が請求した方法と異なる方法で履行の追完をすることができます。

    i   原則:催告が必要です。
    相当期間を定めて追完請求の催告をしたにもかかわらず、売主が応じない場合には、不具合の程度に応じた代金減額請求ができます。

    ii  例外:次の場合、催告なしに代金減額請求が可能とされました。

    ア 履行の追完が不能なとき

    イ 売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき

    ウ 契約の性質・当事者の意思表示により、特定の日時や一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、売主が履行をしないでその時期を経過したとき

    エ 買主が催告をしても履行の追完を受ける見込みがないことが明らかであるとき

    なお、追完請求と同様、不適合が買主の帰責性による場合には、代金減額請求をすることができません。

    [2]  代金減額請求(新563)

    [3]  解除解除(新564)

    [4]  損害賠償請求(新564)
    損害賠償の範囲は、一般の損害賠償と同様、履行利益まで認められるようになりました。

    (4)  買主の権利の期間制限
    上記(3)の各請求は、目的物の引渡後、買主がその不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に「通知」する必要があります。この期間制限は、現行の民法と同様ですが、現民法の「請求」から「通知」で足りることになりました。ただし、売主が引渡時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、この期間制限は適用がありません。

    (5)  目的物の滅失又は損傷に関する危険の移転

    [1]  目的物の引渡し後に滅失・損傷が発生した場合、買主は、原則として、滅失・損傷を理由とする権利主張(追完請求・代金減額請求・損害賠償請求・解除)ができなくなります。

    [2]  売主が引渡しを提供したにもかかわらず、買主が受領しない場合も同様です。

  • 請負契約

    (1)  仕事を完成することができなくなった場合等の報酬請求権
    請負契約は事前の合意がない限り、仕事の完成後に代金を支払います。新民法では、請負契約において、[1]注文者の帰責性なく仕事を完成することができなくなったとき、または、[2]請負が仕事の完成前に解除されたときにおいて、既になされた仕事の結果のうち可分な部分の給付によって注文者が利益を受けるときは、その部分を仕事の完成とみなし、請負人は、注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができることとされました。

    (2)  仕事の目的物が契約の内容に適合しない場合の注文者の権利の期間制限(新637)
    請負の瑕疵担保責任は、引き渡し後1年とされていましたが、新民法では、売買の場合をとの均衡を踏まえて、「注文者がその不適合を知った時から」1年とされ、瑕疵という表現も改められました。

    (3)  注文者の破産手続の開始による解除(新642)
    注文者が破産手続開始の決定を受けたときは、請負人・破産管財人は、契約解除をすることができる点は、現在の民法と新民法で変更はありません。ただし、新法では、請負人による契約の解除については、仕事の完成後はできないことが明記されました。
    請負契約の破産の場合の解除は、民事再生・会社更生による場合と異なっていますので注意が必要です。

  • 錯誤

    (1)  錯誤の効果:無効から取消へ
    現民法では、錯誤は「無効」とされ、無効主張の期間制限はありませんでした。しかし、新民法では、錯誤は、詐欺や強迫の場合と同様、「取消」に変更となりました。この結果、5年以内に取消権を行使しない場合、もはや取消はできなくなります。また、取消の場合には、民法の法定追認の規定が適用されます。

    (2)  重過失と錯誤
    錯誤の主張は、その者に重過失がある場合にはすることができません。このことは現行民法・新民法に共通です。しかし、新民法では、重過失がある場合でも、[1]相手方がその重過失を知っていたか、重過失によって知らなかったとき、または、[2]当事者双方が同一の錯誤に陥っていたときには、錯誤の主張が許されることが明記されました。

  • 賃貸借

    賃貸借については、不動産に関する判例等を明文化したものなど多くの改正が行われていますが、ここでは、不動産以外の賃貸借を念頭に重要な改正点を紹介します。

    (1)  存続期間(新604)
    現行民法では、賃貸借の存続期間・更新期間は、それぞれ20年を上限とされていますが、新民法では、共に50年が上限となるよう改正されました。

    (2)  賃貸物の修繕等(新606)
    賃貸人の修繕義務が明文化されました。但し、従来争いのあった、賃借人の帰責性による場合については。修繕義務はないことも規定されました。

    (3)  賃借人の修繕(新607の2)
    賃貸物の修繕が必要である場合、賃借人は、次の場合修繕をすることができる旨が規定されました。

    [1]  賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、又は賃貸人がその旨を知ったにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき

    [2]  急迫の事情があるとき

    (4)  賃貸借終了後の原状回復義務(新621)

    [1]  従来の判例に従い、通常損耗及び経年変化は原状回復の対象ではない(「損傷」にはあたらない)ことが明記されました。

    [2]  賃借人に帰責性のない損傷についても、賃借人は原状回復義務を負わないこととされました。

English >