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第16回 バンドと法律

H21.12.25 松宮慎

いよいよ今年も残りわずかとなりました。年末,大晦日のイベントといえば,毎年恒例のNHK紅白歌合戦ですね。生活の多様化,裏番組の充実等が原因で,ここ数年は視聴率が低迷しているようですが,今年は,28年ぶりに活動を再開した日本を代表するフォークグループも出場するようですし,フォーク世代のお父さんの中には,今年の紅白歌合戦を見るのを楽しみにしていらっしゃる方もいるのではないかと思います。

さて,上記のフォークグループもそうですが,音楽グループについては,メンバーの脱退,活動の休止,○年ぶりに再結成といった話題をよく耳にします。結成から解散・再結成を幾度となく繰り返し,結成当時から残っているメンバーはリーダー1人というロックバンドもありますし,皆さんご存知のアイドルグループ○○娘。も,次々と世代交代が行われた結果,当初のメンバーは結成から数年で完全にいなくなってしまいました。
このように,とにかく組織再編の激しい音楽グループ。法的には,一体,どのような性質の団体なのでしょうか。バンドを例にとって考えてみたいと思います。

まず,バンドはどのように結成されるのかが問題となりますが,法的には,メンバーが集まって,音楽活動を共同して行うことを約した時点でバンド結成の合意が成立するものと考えられます。

次に,こうしたメンバー間の合意は,法律上,どのような契約に該当するかということが問題となります。この点,共通の音楽的嗜好を有する者が集まって,音楽演奏という事業活動を共同して行うことを約しているのですから,このような合意は,一種の組合契約に該当するものと考えられます。

組合契約とは,各当事者が出資をして共同の事業を営むことを約することで成立する契約です(民法667条1項)。バンドの場合の「出資」とは何かと疑問に思われる方もおられるかもしれませんが,メンバーがお金を出し合って,バンド活動に必要な楽器や音楽機材を共同購入すれば,金銭を出資したことになりますし,作曲や演奏自体も労務の提供として出資に該当すると考えられます。

バンドが組合であるとすると,バンドへの出資やバンド活動で生じた財産,例えば,ライブをして得た収益は,メンバーの共有に属します(民法668条)。楽曲の著作権については,メンバーが共同して作曲した場合はメンバー全員の共同著作物となりその著作権もメンバーの共有財産となりますが,通常は,作曲者であるメンバー個人が著作者とされていることが多いようです。
バンドの業務上の意思決定は,メンバーの過半数で決めなければなりません(民法670条)。

メンバーの脱退についても,民法に規定があり,組合の存続期間を定めなかったときは,各組合員は,いつでも脱退することができると定められています(民法678条1項本文)。したがって,メンバーは,原則として,いつでも脱退できることになります。ただし,やむを得ない事由がある場合を除いては,組合に不利な時期に脱退することはできません(同項但書)。例えば,明日は大事なライブがあるというときにいきなり脱退を申し出ても認められないでしょう。

バンドの解散についてはどうでしょうか。組合は,その目的である事業の成功又はその成功の不能によって解散すると定められています(民法682条)。いわゆるバンドの解散は,この組合の解散にあたるのではないかと思います。もっとも,組合契約自体は,その後の清算手続(民法685条以下)を得て終了しますので,バンドが解散する場合は,解散宣言をするだけでは足りず,その後にバンド財産の清算をしなければなりません。しかし,この点については,解散後に財産の清算までをもきちんと行っているバンドは必ずしも多くないものと思われます(ロックバンドの元メンバー間で,解散後に,バンド名の使用をめぐって紛争になったという事例は記憶に新しいのではないかと思います)。

以上,気の向くままにバンドの法律論を展開してみましたが,バンド一つとっても様々な法律問題が潜んでいることがお分かりいただけたでしょうか。皆さんも身近な事象を法律的に考えてみられたら,きっと面白い発見があるのではないかと思います。

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