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第159回 不法行為に関する訴えについての国際裁判管轄

H26.6.5 松宮 慎

第75回コラムにてご紹介した国際裁判管轄に関する民事訴訟法の改正法(以下「法」といいます。)は,すでに,平成24年4月1日より施行されております。改正法により設けられた国際裁判管轄に関する規定には様々なものがありますが,今回はそのうち,不法行為に関する訴えについての国際裁判管轄を取り上げてみたいと思います。

加害行為が行われた地と結果発生地のいずれもが国内にある場合の不法行為に関する訴えについては,国内土地管轄の規定が適用されます。国内土地管轄については,「不法行為があった地」(法第5条第9号)の裁判所に管轄が認められています。ここで「不法行為があった地」には加害行為が行われた地と,その結果発生地の両方が含まれるとされています。
一方,加害行為が行われた地と結果発生地のいずれかが国外にある場合は,国際裁判管轄の規定である法第3条の3第8号が適用されます。同条号は,「不法行為があった地が日本国内にあるとき(外国で行われた加害行為の結果が日本国内で発生した場合において,日本国内におけるその結果の発生が通常予見することのできないものであったときを除く。)。」と定めており,日本国内における結果発生が通常予見することのできない場合には,日本の裁判所は管轄権を有しないことにして,当事者の予測可能性や法的安定性を担保しています。

ところで,不法行為に関する訴えについて,原告が主張する事実のみに依拠して国際裁判管轄を認めると,根拠のない不当な訴訟を招くことになりかねません。そこで,国際裁判管轄がわが国に認められるためには,どの程度の事実の立証が必要かということが問題となります。この点について,最高裁は,「原則として、被告が我が国においてした行為により原告の法益について損害が生じたとの客観的事実関係が証明されれば足りる」として,管轄の有無を判断するための事実の立証の要件を緩和しています(最判平成13年6月8日民集55巻4号727頁〔ウルトラマン事件〕)。

また,上記のとおり,「不法行為があった地」には加害行為が行われた地だけでなく,結果が発生した地も含むものとされていますが,この結果発生地は,例えば,事故による商品の損傷等の物理的,直接的な損害の発生地に限られ,営業損害等の二次的・派生的な損害の発生地は含まれないものと考えられます。
したがって,外国における不法行為によって,日本の会社が営業損害を被ったとしても,日本の裁判所に不法行為に基づく損害賠償請求訴訟を提起することはできない,ということになります(東京地判平成18年10月31日判例タイムズ1241号338頁〔ノーザンエンデバー号事件〕)。

なお,船舶の衝突その他海上の事故も不法行為の一類型ですが,このような事故に基づく損害賠償の訴えについては特別に規定が設けられており,「損害を受けた船舶が最初に到達した地が日本国内にあるとき」(法第3条の3第9号)に,わが国の裁判所に国際裁判管轄が認められます(参考判例:仙台地判平成21年3月19日判例時報2052号72頁)。

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